エピローグ:芸大所蔵のオランダ近代水彩画
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19世紀オランダにおける素描・水彩画は、世紀後半に展開したハーグ派以外はこれまで 殆ど紹介されてこなかったため、現在の日本人の鑑賞者にとってはほぼ未知の領域といえる。 しかし、明治年間の日本において、この種のオランダの水彩画が輸入されていたことは注目に値する。 東京藝術大学には、19世紀オランダの芸術家による水彩画群が12点所蔵されている。 これは、明治初期の洋画家で、工部美術学校に学んだ中丸精十郎(初代、1840-1895)旧蔵資料で、 明治36年に東京美術学校に寄贈されたものだ。これらは第7回白馬会展に参考出品され、また 水彩画家で中丸の弟子であった大下藤次郎に影響を与えたとされている。 これらの水彩画は、おそらく幕末にオランダに留学していた幕臣の内田正雄旧蔵のものと推測され、 それに従えば、日本に流入したヨーロッパの近代美術の最初期の作例として注目されるものだ。 このような水彩画は、当時の日本人にとっては、ヨーロッパの典型的な風景画と映っていたのかもしれない。 |
a. ユリウス=ヤコブス・ファン・デ・ザンデ・バックハイゼン 《森の道》 1864年 Sande Bakhuyzen, Julius-Jacobs van de (1835-?), Forest road, 1864 |
b. ヘンドリック・ヨハネス・ヴェイセンブルフ 《河辺の田舎家》 Weissenbruch, Hendrick Johannes (1822-1880), Country house on the riverside |
c. ヨハネス・ボスボーム 《会議所の人々》 Bosboom, Johannes (1817-1891), People in the conrefence room |
d. ヘンリー・ファン・インゲン 《瀧》 Ingen, Henry van (1833-1898), Waterfall, 1862 |
e. ヘンドリック・ヨハネス・ヴェイセンブルフ 《河辺》 1866年 Weissenbruch, Hendrick Johannes (1822-1880), Riverside, 1866 |
f. 作者不詳 《イタリアの少女》 anonymous artist, Italian girl |
g. ウィレム・アントニー・ファン・デフェンテール 《海》 1851年 Deventer, Willem Anthonie van (1824-1893), Sea, 1851 |